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日々感じたことをつづる   のほほんブログです。


by asadoricite
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愛がなんだ

またも最近読んだ本から。

愛がなんだ
角田 光代 / 角川書店
ISBN : 404372604X
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角田光代が好きである。
本人もキュートでかわいい女性だと思う。
はしご酒が好きなところや、一人旅に軽々と出て行くところ
時々辛らつなことをさらっと言ってしまうところもいい。

そんな彼女のこの作品。
OLのテルコはマモちゃんに片思い。
彼から電話があれば仕事中でも長話、食事に誘われればさっさと退社。
マモちゃん以外の出来事はどうでもよくて会社ではぼーっとしている。
マモちゃんはマモちゃんで、テルコのことが好きでもないのに
風邪になると電話をかけて何か買ってきてと頼み
頼んでおいて「帰ってくれないかな」と言う。
正直どうしようもない女と、どうしようもない男の話だ。
私だったらこんな人たちがそばにいてほしくないと思う。
会社の同僚もまっぴらだし、まして友達になんてなりたくない。
だけど読んでいるうちに、なんだかせつなくなってくる。

テルコはマモちゃんから誘われたらすぐに駆けつけられるように
仕事が終わるとマモちゃんの会社の近くをうろうろしている。
そして思う。
「ストーカーが私のような女を指すのなら、
世の中は慈愛に満ちているんじゃないの」 と。

マモちゃんがテルコに聞く。
「こんな男のどこがいいの?」と。
かっこよくもなくて、才能もなくて、やさしくもなくて金も持っていない。
テルコは答える。
「そうだよねぇ。私もそう思う。好きになるようなところ、ないじゃん」
そして思う。
”顔が好みだの性格が優しいだの、何かに秀でているだの
プラスの部分を好ましいと思い誰かを好きになったのならば、
嫌いになるのなど簡単だ。
プラスがひとつでもマイナスに転じればいいのだから。
そうじゃなくてマイナスであることそのものを、自分勝手で子供じみていて
かっこよくありたいと切望してそのようにふるまって、
神経こまやかなふりをして、でも鈍感で無神経さ丸出しである、
そういう全部を好きだと思ってしまったら、
嫌いになるということなんて、たぶん永遠にない” と。

読み返してみて、ちょっと泣きたい気持ちになる。
愛がなんだ。愛のバカヤロー。愛バンザイ。
by asadoricite | 2006-05-28 12:18 | 読書日記